降った先のコンクリート
148cm × 188cm
pencil and acrylic on canvas
2017
描いたイメージは九歳から十九歳まで過ごした故郷の風景。愛知県知多郡東浦町にある乾坤院(2016年全焼のち再建)の裏山のはずれのすり鉢状の傾斜地に暮らしていた。自宅の庭に広がる雑木林は、名古屋市内から引っ越してきた「もやしっ子」の友達だった。「滑る池の桜」は地すべりで池の中に滑り落ちた桜の大木がモチーフになっている。池は現在は干上がってしまっているが、桜は毎年花を咲かせている。「地蔵の裏の天国」は乾坤院の地蔵の裏側にある鬼頭家のペットの墓がモチーフ。犬は敷地の彼方此方で番犬として飼っていて「降った先のコンクリート」にその中のそのうちの二箇所が描かれている。前述の桜の付近でも祖母の代の番犬が飼われていた。

作品の傾向は若い頃から頻繁に変化した。周囲からは冷たい視線を受けたが、直前までやっていたことに対して情熱が湧かないとか執着出来ないとか色々と浅はかなのだろう。絵画制作で大事なことは表現のピントを合わせることではないかと最近思っている。今回の企画をいただいたとき具体的な風景を描くには強い意味づけが必要だと思った。モチーフとして選んだ景色の中でもペットの墓は過去に二度作品にしている。描く表象や構図から自由になる方法として写真を利用する。
健康上の理由から油絵具の使用を控えている。今回使用した画材はゴールデン社の「オープンアクリリック」。通常のアクリル絵具と比べて乾燥スピードが遅いため油絵具と似た時間感覚で制作できる。支持体の組立から絵具による描画を終えるまでの間、油画科出身ということもあってか画面と共有している非日常に心を集中出来た。
地蔵の裏の天国
130cm × 194cm
pencil and acrylic on canvas
2017
滑る池の桜
130cm × 194cm
pencil and acrylic on canvas
2017

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